心の椅子

精神的支えのことを「心の椅子」と呼んでいます。思わぬ体調不良の予防に役立つと思い、このブログを立ち上げました。

【さみしさの研究】安部公房

前回私が主宰した当事者研究の中お話させていただきました「さみしさの研究」のその後の状況です。

 

仕事をしているときは紛れますが、帰宅後一人でいるとさみしさに襲われることがよくあります。コロナ禍の中、何もない休日や連休に特に感じます。誰とも話さず過ぎる1日はこたえます。自然、お酒の量も増えていったようです。

 

当事者研究の中で話ししたところ、そのさみしさというのは、根源的で、「どこまでいっても人はさみしいもの」「パートナーや家族がいてもさみしく感じることはある」との声が出て、なるほどと思いました。

 

ところで、私は小説家安部公房が大好きで、大学生のころから読み始め全集をそろえるほどです。特に『砂の女』『他人の顔』『燃えつきた地図』という中期三部作(失踪三部作)の世界は、どれも都会の孤独を感じさせます。文明社会が、人間同士の深い結び付きを妨げ、疎外感を与えるといった見方は、古臭いという批判があるかも知れませんが、今回のコロナ禍において、疎外感をとても実感してしまったのです。

 

私が抱えるさみしさは私個人のものであると同時に、人間一般が抱える孤独であり疎外感ではないかと感じます。そう思うと、得体のしれないさみしさに少しだけ形が現れ、付き合い方を模索できるような気がしています。

 

安部公房の小説は、主人公がもがきつつ進んでいきます。希望がすぐ見える話ではなく、どこまでいっても孤独でむしろ絶望的な見通しの暗さを感じさせます。しかし、もがいた末に新たな物語の始まりをみせるような不思議な終わり方をします。私ももがくことによって、新たな物語の扉を開けたら良いなと思います。