今回、大学時代のさみしさを思い返してみて、自分のさみしさのルーツが分かったような気がする。それはしんどい体験ではあったが、悪いことばかりではなく、不完全燃焼の中自分なりにもがき、何かを求めていた時期で、小説もよく読んでいた。その中で安部公房という小説家に出会えたことはとても意味が大きい。科学実験にことごとく失敗し、満足に卒業論文が書けない絶望的な中、私は当時ブームだったホームページを自作し、安部公房をテーマにした。そのときは、自分の好きなものを誰かに伝えたいと思ったのだと思う。うまい文章とは言えないが、ひとまずの内容と体裁を整えて発表したところ、割合と好評だった。結局、卒業論文はひどい出来だったけれど、せめてもの慰みにはなった。大学卒業後、同じファンに出会い、共同で同人誌を制作するなどの活動や読書会開催ができたことは、とてもありがたい体験だった。