心の椅子

精神的支えのことを「心の椅子」と呼んでいます。思わぬ体調不良の予防に役立つと思い、このブログを立ち上げました。

くるみと宝石領域

心が落ち込んでしまったどん底の時にこそ、心に染みる歌がある。

沢山有るけれど、一つ挙げるとすると、私の場合はMr.chiledrenの「くるみ」になる。PVがとにかく素晴らしい出来なのだ。

公式設定はわかないけれど、自分の感じた解釈を書いてみる。

中年の4人組がバンドを再結成するストーリー。

ショーウィンドウのギターを見る男。手に握るのは僅かな小銭。自宅で一人ぼっちの食事をして、妻と子どものことを回想し、嗚咽をもらし、バンド再結成を考え、昔の仲間に呼びかける。彼らもそれぞれ仕事を持っている。まず、歌を聞いた蕎麦屋が涙を流す。そして、工事現場監督も来る。しかし、妻にブレーキをかけられた八百屋が来てくれない。

布団の中で考えを巡らす彼の顔はとても怖い。しかし、家庭を振り切って、夜中走りながらやってくる。妻ではなく、今の家庭の幸せを壊すかも知れない一歩を踏み出すのが怖かったのだ。それでも来てくれた。

そして、4人は再結集する。公民館で歌うことから始まり、妊婦相手の胎教講座、そして最後に結婚式で歌う。

お客を沸かせる映像が一瞬出た後、白けきった一同の顔、どうやら湧き上がったシーンは現実ではないらしい。顎に手を当てながら、退屈そうにしている。

でも、帰り道は、メンバー同士たたえ合う。彼らはやりきったのだ。悔いもないのだろう。すばらしい笑顔だ。

見ていて、涙を禁じ得なかった。音痴だけど、風呂場でメロディーを口ずさんだ。大げさかもしれないが、この歌がなければ、今の自分の回復はなかったかもしれない。

そのとき、私は苦しんでいた。気分障害のため、会社を休職した後退職していた。デイケアや各種プログラムなどにも行ったが、体調がすぐれず欠席も多く、まず定着できなかった。「不真面目なわけじゃない!ただ、最初の一歩がうまく踏み出せない。それをサポートしてほしいのに・・・」

なかなか、支援者にそれが分かってもらえず、悔しい思いもした。

家庭も姉が暴君として存在し、召使いとなった母の言動でさらに傷つくということもあった。

自尊心や人を信じ愛する気持ちなど、心の中のいちばん大事な領域(宝石領域と呼ぼう)も傷つきそうになった。でも、それはなんとか保てた。何故保てたか分からなかった。卒業時、専門学校の先生から、私の人の良さを褒めてくれて、それは家庭環境によるものですかと聞かれた。私の家庭環境はひどいものだったが、腐らずに宝石領域を壊さずに生きてこれた。私を助けてくれたが、家族ではなく、「くるみ」だったり、他の歌だったり、もっと広く、音楽小説、芸術学問だった。それらを愛する気持ちと能力があったことが救いだった。