心の椅子

精神的支えのことを「心の椅子」と呼んでいます。思わぬ体調不良の予防に役立つと思い、このブログを立ち上げました。

映画「招かれざる客」

TOHOシネマズの上映企画「午前十時の映画祭」で観たのですが、とても素晴らしい映画でした。

テレビ放映時の予告編CMを子供の頃に観たときは、白人女性と黒人男性の結婚に猛反対される映画なのかなと勝手に思っていました。

 

冒頭の空港シーンで、黒人男性医師ジョンは恋人ジョアンナとアツアツです。ジョアンナの両親の経営する画廊に寄ると、スタッフの女性に訝しがられます。実家は、使用人たち(白人ではない)がいるブルジョア家庭です。母親クリスティーナと馴れ初め話と盛り上がったところで、ジョンが現れ、クリスティーナの顔が引きつります。庭で3人で食事していると、父親のマットが帰ってきます。神父とゴルフの約束があるなどと言って、忙しそうです。黒人の家政婦がマットに耳打ちしてきます。庭で食事しているクリスティーナとジョアンナとジョンを見る。時間が無いけれど、マットはジョンを歓迎しますと行ってゴルフに行こうとします。しかし、どうも空気がおかしいと思い、戻ってくると、今日中に婚約するつもりとジョアンナから告げられる・・・

 

私の想像とは違い、父親マットは新聞社主という社会的地位の高い方であり、そして進歩思想の持ち主で、黒人を差別する気持ちは毛頭ないのです。しかししかし、理想は高邁であるけれど、やはり自分の娘が黒人と結婚するとなると、理性とは違う部分、つまり感情の部分で、拒絶したい気持ちが沸き起こるのではないでしょうか?ジョンは医師という社会的地位の高い方で、業績も素晴らしく、聞けば聞くほど素晴らしい人間です。マットは断る理由が見つからず、複雑な表情を見せるのでした。

 

しかし、ジョアンナはお転婆で、ジョンの家族を呼んだり、今日中に婚約の承諾を迫ったりと振る舞わしてきて、マットも苛立ってきます。マットとクリスティーナが二人でドライブして、アイスクリームを食べます。いい感じで話がまとまったかと思いきや、駐車場から出る際に、黒人男性の車にぶつけてしまいます。その黒人が、ある意味ステレオタイプのガラの悪い黒人で、ひどいなじり方をしてきます。腹が立ったマットは、帰宅後、結婚に反対にすると言い出します。怒りが収まらず、髭を剃りながらクリスティーナと口論になり、ブラシを間違えて、酒のグラスに入れてしまいます…

 

私は見ていて、「はやりそうだよな・・・、そんなにうまくいくはずないよな。この時代にハッピーエンドなんて、映画としてもおよそ無理だろう・・・」と思ってしまいました。

しかし、この映画はここからがスゴイ。やはり反対の姿勢のジョンの父親がジョンに、「こんなことは馬鹿げている、やめなさい」と言う。父親と子の物語など、それぞれの人生が垣間見えてきます。ジョンの母親は物静かですが、愛の力を人一番信じています。その心がクリスティーナも、そしてマットも突き動かします。難局に差し掛かっても、対話して可能性を諦めない人たちの誇り高き姿勢が素晴らしかったです。

 

最後に、マットは言います。

「親の意見など問題じゃない。肝心なのは当人達の愛情の深さだ」

 

困難なことも分かっています。それでも、希望はやはりあるのです。私もまた、この映画に教わったことがあります。恋愛に関して、人種や障害で差別するというのはおかしいと思うのです。「二人が愛し合うのであれば、それでいい」

また、青臭いことを言いますが、それを真顔で言える人間でありたいと思うのです。