心の椅子

精神的支えのことを「心の椅子」と呼んでいます。思わぬ体調不良の予防に役立つと思い、このブログを立ち上げました。

「アンダーカレント」の感想

大学生からの付き合いで結婚し、婿養子として妻の実家が営む銭湯の仕事をする夫。幸せな夫婦と周囲から思われ、妻もそうだと感じていたが、組合の旅行先で夫は蒸発。呆然と過ごす妻に、釜炊きの男がやってくるというのがあらすじだ。登場人物一人一人の言葉が印象的な作品だ。

今回この作品のことを取り上げるのは、蒸発した夫のことが気になったからだ。夫は最終回に登場する。幼い頃に親を亡くしたと言っていたが、妻に依頼された探偵の調査で、実は二年前までは生きていた事が分かる。過去にも嘘をついて、破綻しては逃げるの繰り返しだったという。虚言癖の持ち主かもしれない。しかし、同時に傷つくことをとても怖がっているような非常に繊細なガラスの心の持ち主のような感じがした。

「ひどい男だろう?」と妻に語る夫の横顔はとても寂しげで、自分ではどうしようもない心の闇をうかがわせる。世の中には「幸せに耐えられない人間」がいるのではないかと思ってしまった。

最後に、妻が「まだどうして出ていったのか聞いてないよ」と尋ねる。

「君のことが本当に好きで、だから一緒にいるのがつらくなった……っていうのでどう?」と夫がおどけたあとの妻の対応が好きだ。この場面は実際にこのマンガを手にとって欲しい。

最後の妻の優しさが一番、堪えたのではないだろう?

幸せに耐えられない寂しい孤独な人間もいるように思う